SheSTEMの6つの思考のOSとは?

子どもに必要なのは、答えを早く出す力だけではありません。

目の前のものをよく見る。
違いに気づく。
「なぜだろう?」と考える。
条件を整理する。
確かめる方法を考える。
そして、自分の言葉で説明する。

こうした力があるから、子どもは、与えられた問題を解くだけでなく、 自分で問いを見つけ、考えを進められるようになります。

SheSTEM Japanでは、このような考える力の土台を、 「6つの思考のOS」として整理しています。

アプリ思考とOS思考

子どもが何かを考えるとき、そこには大きく2つの思考があります。

ひとつは、公式、手順、解き方、テンプレートを使って進める考え方です。
SheSTEMでは、これをアプリ思考と呼んでいます。

もうひとつは、そもそも何を見ればよいのか、何が問題なのか、 どの条件を整理すればよいのかを考える土台です。
SheSTEMでは、これをOS思考と呼んでいます。

アプリ思考は、解き方が見えているときに力を発揮します。

一方で、初めて見る問題、条件が変わる場面、答えが一つに決まらない場面では、 先にOS思考が必要になります。

何を見ているのか。
何が同じで、何が違うのか。
どこに違和感があるのか。
何を確かめればよいのか。
どう説明すれば伝わるのか。

この土台があることで、子どもは必要な解き方や方法を、 自分で選べるようになります。

SheSTEMの6つの思考OSは、アプリ思考を支えるための、 考え方の土台です。

答えの前に、「何を問うか」を見つける力

多くの学びでは、問題が先に与えられます。

「この問題を解きなさい」
「この答えを出しなさい」
「この手順で進めなさい」

もちろん、それも大切な学びです。

でも、現実の世界では、最初から問題文が用意されているとは限りません。

何が起きているのか。
どこに違和感があるのか。
何を確かめればよいのか。
そもそも、何を問題として捉えるべきなのか。

そこから考える場面も多くあります。

SheSTEMが大切にしているのは、子どもたちが、与えられた課題を早く解く前に、 現実から「何を問うべきか」を見つける力です。そのためには、観察から目的まで、考える流れを支える土台が必要です。

👀観察する 💡気づく 🔎問題を見つける 🧪仮説を立てる 🎯課題を絞る 問いにする 🚩目的を持って進める

STEAMは、問いを進めるための見方

SheSTEMでは、STEAMを、子どもが現実を見るための複数の視点として捉えています。

  • Science:事実をよく見て、比べる視点
  • Technology:記録し、測り、見える形にする視点
  • Engineering:条件を整理し、試しながら改良する視点
  • Arts:感じたことや考えたことを、相手に届く形にする視点
  • Mathematics:量、関係、変化、不確かさを捉える視点

同じ出来事を見ても、事実に注目することもできます。
条件に注目することもできます。
変化に注目することもできます。
伝え方に注目することもできます。

STEAMは、子どもが現実をさまざまな角度から捉え、 問いを進めていくための道具です。

SheSTEMの6つの思考OSは、こうしたSTEAMの見方を使いながら、 子どもが自分で考えを進めていくための土台です。

脳の働きと、6つの思考OS

SheSTEMの6つの思考OSと脳の働きを示した図
↑6つの思考OSと、学びに関わる脳の働きのイメージ

子どもが何かを見て、気づき、考え、言葉にするまでには、 脳の中でさまざまな働きが連携しています。

見たものを受け取る働き。
位置や関係をつかむ働き。
違いやまとまりに気づく働き。
情報を整理し、順番に考える働き。
量や変化を手がかりにして判断する働き。
感じたことや考えたことを、言葉にして表す働き。

これらの働きは、脳の中で別々に動いているのではなく、 互いにつながりながら働いています。

たとえば、見た情報を処理する視覚野。
位置や関係を捉える頭頂連合野。
計画、判断、切り替えに関わる前頭前野。
言葉や意味の理解に関わる側頭葉。

こうした領域が連携することで、子どもは、見たものをただ受け取るだけでなく、 意味をつかみ、考えを整理し、他者に伝えられるようになります。

SheSTEMの6つの思考OSは、子どもが見て、気づき、考え、言葉にするまでを支える、 考える力の土台を整理したものです。

6つの思考OS

OS 1

Sensorimotor Intelligence
手で考える力

手でさわる。
動かす。
並べる。
比べる。
試してみる。

子どもは、頭の中だけで考えているわけではありません。

手や身体を使いながら、形、大きさ、重さ、向き、違いを感じ取り、 理解していきます。

この力が育つと、子どもは「まずやってみる」ことができます。

頭の中だけで考え込むのではなく、実際に動かしてみる。
試した結果から、次を考える。
うまくいかなければ、少し変えてみる。

手で考える力は、単に器用さの問題ではありません。
ものごとを自分で確かめながら理解する力です。

このOSが育つことで、子どもは「見ているだけ」ではなく、 試しながら考えることができるようになります。

OS 2

Spatial Cognition Foundation
空間根拠力

空間根拠力とは、ものの位置、向き、距離、回転、上下左右、 全体と部分の関係を捉える力です。

「どこにあるのか」
「どちらを向いているのか」
「回したらどう見えるのか」
「全体の中で、今どこを見ているのか」

こうした感覚は、図形の問題だけでなく、ものごとの関係や全体像を捉えるときにも関わっています。

情報が多いとき、子どもはどこを見ればよいのか分からなくなることがあります。

でも、空間根拠力が育っていると、 全体の中で位置づけながら考えることができます。

今、何を見ているのか。
何と何が関係しているのか。
どこを変えると、全体がどう変わるのか。

このOSが育つことで、子どもはものごとをバラバラに見るのではなく、 位置関係や全体像の中で捉えられるようになります。

OS 3

Visual-Structural Reasoning
構造視覚推論

構造視覚推論とは、見えているものの中から、 パターンや規則性、部分と全体の関係を見抜く力です。

ただ見るのではなく、構造を見る

「何が同じなのか」
「何が違うのか」
「どこに規則があるのか」
「これは、何が組み合わさってできているのか」

こうした見方ができると、複雑に見えるものも整理しやすくなります。

たとえば、形、文章、実験、道具、仕事の流れなども、 表面だけを見るとバラバラに見えることがあります。

でも、その中にあるまとまり、関係、繰り返し、順番に気づくと、 理解しやすくなります。

構造を見る力は、算数や理科だけの力ではありません。

初めて見るものごとに向き合ったとき、 何が大事なのか、どこに関係があるのかを見抜く力です。

このOSが育つことで、子どもは「見えたもの」をそのまま受け取るだけでなく、 どう成り立っているのかを考えられるようになります。

OS 4

Executive Logic Engine
実行ロジック機能

実行ロジック機能とは、情報を整理し、順番を考え、 仮説を立て、確かめながら進める力です。

「まず何を見るか」
「次に何を比べるか」
「どの条件をそろえるか」
「何を変えて、何を変えないか」
「どこまで分かっていて、どこからが分からないのか」

こうした整理ができると、子どもは考えを途中で止めずに進めることができます。

反対に、この力が弱いと、情報が多い場面で混乱しやすくなります。

分かっていることと分かっていないことが混ざり、 何から考えればよいのか分からなくなります。

実行ロジック機能は、単に順番どおりに進める力ではありません。

状況を見て、必要ならやり方を変える。
一度立てた仮説を、結果に合わせて見直す。
目的に向かって、考えを調整する。

このOSが育つことで、子どもは「なんとなく考える」のではなく、 考えの進め方そのものを組み立てられるようになります。

OS 5

Quantitative Reasoning Core
数量・数理の中核

数量・数理の中核とは、数を単なる記号や計算手順としてではなく、 ものごとの大きさ、関係、変化を捉える力です。

多いのか、少ないのか。
どれくらい違うのか。
どのくらい変わったのか。
全体の中で、どれくらいを占めているのか。
この先、どう変化しそうなのか。

こうした感覚があると、子どもは数字を「答え」だけとしてではなく、 状況を理解する手がかりとして扱えるようになります。

計算ができることは大切です。

ただ、計算できることと、その数字が何を表しているのかを理解していることは、同じではありません。

同じ数字でも、場面によって意味は変わります。

個数なのか。
時間なのか。
距離なのか。
割合なのか。
変化の大きさなのか。

数量・数理の中核が育つと、子どもは数字に振り回されるのではなく、 数字を使ってものごとを整理できるようになります。

算数は、この力を育てやすい学びの入口のひとつです。

数を使って比べる。
量の違いに気づく。
変化を見つける。
関係を整理する。

こうした算数的な活動には、思考のOSを育てる要素が多く含まれています。

算数を通して育てたいのは、量や関係、変化を手がかりにして、 ものごとを整理し、自分で考えを進める力です。

このOSが育つことで、子どもは感覚だけで判断するのではなく、 見えにくい関係や変化を、考える手がかりとして扱えるようになります。

OS 6

Semantic Expression Ability
意味表現力

意味表現力とは、見たこと、気づいたこと、考えたことを、 自分の言葉で整理し、相手に伝わる形にする力です。

「なぜそう思ったのか」
「どこを見てそう考えたのか」
「何が分かって、何がまだ分からないのか」
「どうすれば相手に伝わるのか」

こうした力は、考えることと深くつながっています。

言葉にすることで、頭の中の考えは整理されます。
説明しようとすることで、自分の理解の浅さやズレにも気づきます。
相手に伝えることで、考えはさらに磨かれていきます。

意味表現力は、単に話が上手いということではありません。

自分の考えを、根拠とともに伝える。
相手に合わせて、言葉や表現を選ぶ。
図や数、例を使って、分かりやすく説明する。

このOSが育つことで、子どもは「分かったつもり」で終わらず、 自分の考えを外に出し、他者と共有できるようになります。

6つのOSは、問いを立てる流れを支えている

6つのOSは、それぞれ別々に働くものではありません。

6つの思考OSがつながり合う脳のイラスト

手で試すから、違いに気づく。
空間や構造を見られるから、関係に気づく。
量や変化を捉えられるから、曖昧なものを整理できる。
順番を考えられるから、仮説を立てて確かめられる。
言葉にできるから、問いや目的として表現できる。

子どもが現実を見て、問いを立て、考えを進めるとき、 6つのOSはつながり合って働いています。

SheSTEMが育てたいのは、ただ正解を早く出す子ではありません。

目の前のことをよく見て、
違和感に気づき、
自分なりの問いを立て、
条件を整理し、
試しながら考え、
自分の言葉で伝えられる子です。

その力は、算数や理科だけでなく、これからの学び、仕事、 社会との関わりすべてにつながっていきます。

つまずく前に、思考のOSを育てる

子どもが学びにつまずくとき、周囲はつい「やる気がない」「能力が足りない」と捉えてしまいがちです。

でも実際には、答えにたどり着く前の段階で、 必要な思考の土台がまだ十分に育っていないことがあります。

見る力。
量の感覚。
関係をつかむ力。
順番に整理する力。
言葉にする力。

見る、比べる、関係をつかむ、順番に整理する。
こうした土台が十分でないまま、計算手順や解き方だけを求められると、子どもは「どこを見ればよいのか」「何を考えればよいのか」が分からなくなりやすくなります。

だからこそ、SheSTEMでは、つまずいてから対処するのではなく、 つまずく前に思考のOSを育てることを大切にしています。

6つの思考OSを育てることは、子どもに「正解の出し方」を教えることではありません。

自分で見て、
自分で気づき、
自分で問いを立て、
自分で考えを進めるための土台をつくることです。

SheSTEMの教材とプログラムは、この6つの思考OSをバランスよく育てることで、 子どもたちが自分で見て、考え、整理し、伝える力の土台を育てることを目指しています。

問いを立てる学びへ

6つの思考OSは、子どもが自分で見て、気づき、問いを立て、考えを進めるための土台です。

SheSTEMでは、この土台をもとに、正解を覚えるだけでなく、 自分で問いを立てて考える学びを大切にしています。

探究学習についての考え方は、 探究学習とは?|正解を覚える学びから、問いを立てて考える学びへ で紹介しています。

Thinking Engineへ

これらの6つの思考OSを土台にしたプログラム Thinking Engine(思考のエンジン) では、年長〜小学生向けのミッション形式の問題を通して、 つまずく前の思考のOSを楽しく育てていきます。

算数は、思考のOSを育てやすい入口のひとつです。

Thinking Engineでは、算数的な問題を通して、答えを出す力だけでなく、 見る、気づく、比べる、整理する、試す、説明する力を育てていきます。