女の子が自信を持って未来を選ぶ姿を象徴するビジュアル。無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)に気づき、STEMへの興味と可能性を広げるSheSTEM Japanのメッセージ。
UNCONSCIOUS BIAS

アンコンシャス・バイアスとは?

私たちは日々、たくさんの情報を瞬時に判断しています。
その多くは「考える前に反応している」ような、無意識の思考によるものです。

このような無意識の思考に影響を与える「思い込み」や「先入観」を、 アンコンシャス・バイアス(Unconscious Bias)=無意識のバイアスと呼びます。

「理系は男の子が得意」「女の子はおしゃべり」「リーダーは男性が多い」――。

こうした言葉に明確な悪意がなくても、知らないうちに“当たり前”だと感じてしまうことがあります。 それが、無意識の思い込み=アンコンシャス・バイアスです。

家庭での会話、学校で任される役割、メディアで目にする人物像、 失敗したときにかけられる言葉など、日常のさまざまな経験が重なることで、 「自分に向いていること」「自分には難しいこと」という認識が少しずつ形づくられていきます。

GIRLS AND STEM

女子が理系を選択肢から外していくまでには、
段階があります

学びの経験、教科への自己評価、周囲の言葉、社会で目にする役割や職業像は、 成長の中で少しずつ重なっていきます。

女子が理系を選択肢から外していくまでの5段階。幼児期の学習基盤から進路選択までを示した図
アンコンシャス・バイアスは、日常の経験や周囲から受け取るメッセージを通して、 各段階の自己認識や将来像に少しずつ影響します。 次のセクションでは、その判断がどのように生まれるのかを、 人の思考の働きから整理します。
HOW WE THINK

人の判断を支える、
2つの思考システム

私たちは毎日、目に入るもの、聞こえる音、人の表情、周囲の状況など、 非常に多くの情報を受け取っています。
人の思考には、素早く自動的に判断する「システム1」と、 注意を向けて考える「システム2」という、性質の異なる2つの働き方があります。

素早く自動的に判断するシステム1のイラスト SYSTEM 1

素早く、自動的に判断する

システム1は、意識して考えなくても自動的に働きます。 日常の多くの判断は、このシステム1によって支えられています。

たとえば

  • 突然、大きな音がして振り向く
  • 飛んできたボールをよける
  • 相手の表情から感情を読み取る
  • 「2+2」を見て、すぐに「4」と答える
  • 読み慣れた言葉を、意識せずに読む

危険を察知し、慣れた行動を素早く行うために、 生きるうえで欠かせない働きです。

注意を向けて情報や根拠を確かめるシステム2のイラスト SYSTEM 2

注意を向けて、情報を確かめる

システム2は、すぐには答えが出ないことを考えるときに働きます。 注意と時間が必要なため、日常のすべての判断で使われるわけではありません。

たとえば

  • 「17×24」を暗算する
  • 複数のグラフを比較する
  • 初めて見る問題の解き方を考える
  • いくつかの進路を条件ごとに比較する
  • 自分の判断の根拠を振り返る

情報や根拠を確かめることで、 最初に浮かんだ判断を見直すことができます。

🧠

システム1の判断には、無意識のバイアスも入り込みます

システム1は、これまでの経験や、繰り返し見聞きしてきた言葉・イメージを手がかりに判断します。 そのため、「科学者やエンジニアは男性」「理系や技術は男子が得意」といった社会的なイメージも、 本人が意識しないまま判断の材料になることがあります。 このように、意識して考える前の判断に影響する思い込みや先入観が、アンコンシャス・バイアスです。

たとえば、算数のテストで女子の点数が下がったとき

同じ出来事でも、最初の印象だけで判断する場合と、 情報を確かめる場合では、見えてくることが変わります。

システム1で浮かびやすい判断

「算数が苦手なのかもしれない」
「文系のほうが向いているのかもしれない」

システム2で確かめること

  • どの問題でつまずいたのか
  • 計算か、問題の意味の理解か
  • 時間制限や緊張の影響はなかったか
  • これまでどのような学び方をしてきたか
  • 本人は算数や科学にどのような関心をもっているか

情報を確かめることで、「算数が苦手な子」という評価ではなく、 「割合の意味を捉えるところでつまずいている」など、必要な支援が具体的に見えてきます。

※システム1とシステム2は、脳の中に独立した2つの部位があるという説明ではなく、 人の判断や思考の働きを理解するための考え方です。

BIAS AND STEM

STEMに関する判断に影響する主なバイアス

アンコンシャス・バイアスには、さまざまな種類があります。 ここでは、子どもの教科への自己評価や将来の選択に影響しやすいものを紹介します。

👥

ステレオタイプ

「理系は男子向き」「女性は文系が得意」など、 集団に対するイメージを個人にも当てはめてしまうことです。

🔍

確証バイアス

自分がもっている考えに合う情報を集め、 反対の情報を見落としやすくなることです。

🏷️

ラベリング

「算数が苦手な子」「理系ではない子」など、 一度ついた評価によって、その後の見方が固定されることです。

アンカリング

最初のテスト結果や最初に受けた評価に引っ張られ、 その後の成長を十分に捉えにくくなることです。

📣

社会的証明

「周囲もそう考えている」「女子はあまり選んでいない」という状況から、 それが適切な選択だと感じることです。

🧩

同質性バイアス

自分と似た経験や考え方をもつ人を理解しやすく、 無意識に高く評価することです。

🎓

権威バイアス

教員、保護者、専門家などの言葉を強く受け取り、 自分自身の関心や可能性より優先してしまうことです。

アンコンシャス・バイアスを象徴するイメージ 集団の中で生じる思い込みや判断の偏りを表すイメージ
EVERYDAY INTERACTIONS

アンコンシャス・バイアスは、
日常の関わりの中に表れます

子どもが何に触れ、失敗したときにどのような言葉を受け取り、 活動の中でどのような役割を任されるか。 一つひとつの関わりが、教科への自己認識や将来像に影響します。

🧱

遊びや体験

ブロック、工作、工具、実験、パソコンなどに触れる機会があることで、 数や空間、技術への親しみが育ちます。

💬

失敗したときの声かけ

間違いを能力の評価で終わらせず、 どこまで考えたか、次に何を試せるかを一緒に確認します。

🛠️

活動の中で任せる役割

記録、発表だけでなく、操作、設計、計測、分析など、 多様な役割を経験できるようにします。

🔭

目にする将来像

STEM分野で働く多様な女性や、 教科学習が社会や仕事につながる場面に触れる機会をつくります。

EDUCATIONAL APPROACH

5段階のそれぞれで、選択肢を残す

女子が理系を選択肢から外していく過程を捉えることで、 どの段階で、どのような関わりが必要なのかを考えることができます。

01

幼児期〜低学年

数、形、空間、観察、ものづくりに触れ、 試したり考え直したりできる経験を増やします。

02

小4〜小5

正解の速さだけでなく、関係を捉えること、 根拠を説明すること、複数の考え方を認めます。

03

苦手意識が生まれる時期

「分からない」を能力の限界と結びつけず、 つまずいた場所と次に試す方法を具体的にします。

04

将来像が形づくられる時期

STEM分野の多様な女性や仕事に触れ、 教科と社会とのつながりを知る機会をつくります。

05

進路を具体的に考える時期

現時点の得意・不得意だけで判断せず、 本人の関心と意思をもとに複数の選択肢を検討します。

LEARN BY VIDEO

動画で学ぶ
親が学ぶアンコンシャス・バイアス

日常の声かけや判断の中にあるアンコンシャス・バイアスを、 「気づく」「選びなおす」の2部構成で解説しています。

第1部から順に見ると、日常の言葉や判断を整理しやすくなります。

SELF-REFLECTION

自分の中にある無意識の傾向を知る

ハーバード大学の研究プロジェクト「Project Implicit」では、 無意識の連想傾向を確認するIAT (Implicit Association Test)を体験できます。

IATは、個人の性格や差別意識を診断するためのものではありません。 自分の判断や連想の傾向を振り返るための教育的なツールとして利用してください。
FROM RESEARCH TO DESIGN

調査から教育設計へ

SheSTEM Japanでは、女子STEM離れを個人の関心や能力だけで捉えず、 成長の中で重なる経験、周囲との関わり、自己認識、社会的なイメージのつながりから分析しています。

🧱 触れる遊びや
活動の違い
💬 周囲から受け取る
言葉の違い
🪞 得意・不得意の
自己認識
🏙️ 理系・仕事に対する
社会的イメージ
↪️ STEMを進路の
選択肢から外す
調査によって課題の形成過程を捉え、幼児期から進路選択期までの各段階で、 問い、試し、根拠を確かめ、社会とつながる学びを設計する。 それがSheSTEM Japanの教育・共育プログラムにつながっています。
MESSAGE

気づくことで、判断を見直すことができる

アンコンシャス・バイアスは、誰もがもつ認知の働きです。
大切なのは、自分の判断に思い込みや先入観が影響していないかを確かめ、 必要に応じて見直すことです。

子どもの関心や可能性を、性別や過去の評価だけで決めず、 本人が問い、試し、考えながら選べる環境をつくる。
SheSTEM Japanは、調査と教育設計の両面からその環境づくりを進めています。