SheSTEMの6つの思考Rootsとは?
SheSTEM Japanでは、子どもたちが算数やSTEM分野に進む前に育てておきたい 「6つの思考Roots(ルーツ)」を定義しています。これは、脳科学・認知心理学・教育学の研究にもとづき、 年長〜小学校低学年の学びを支える「思考の根っこ」を体系化したものです。
このページでは、6つのRootsと、それぞれが脳のどの領域と関係しているかをわかりやすく紹介します。 SheSTEMの教材やワークショップは、すべてこのRootsを育てることを目的に設計されています。
脳の中の「思考Roots」マップ
上の図は、「頭頂連合野(数量感覚・空間認知など)」と 「前頭前野(集中・抑制・計画・柔軟性など)」 を中心に、学びに深く関わる領域を示しています。 SheSTEMの6つのRootsは、これらの領域どうしがネットワークとして連携することで育っていきます。
6つの思考Rootsと脳の領域の対応
それぞれのRootは独立しているように見えますが、実際の脳の中では「根っこ同士がつながるように」 相互に影響し合っています。ここでは、各Rootの役割と、主に関係する脳の領域を簡単に整理します。
- ROOT1:Sensorimotor Intelligence(手で考える力)― 小脳・感覚運動野
- ROOT2:Spatial Cognition Foundation(空間根拠力)― 頭頂連合野
- ROOT3:Visual-Structural Reasoning(構造視覚推論)― 視覚野+頭頂葉
- ROOT4:Executive Logic Engine(実行ロジック機能)― 前頭前野
- ROOT5:Quantitative Reasoning Core(数量・数理の中核)― 頭頂連合野+前頭前野
- ROOT6:Semantic Expression Ability(意味表現力)― 側頭葉+前頭前野
ROOT 1|Sensorimotor Intelligence ― 手で考える力
関連する脳の領域:小脳・感覚運動野(図の頭頂部〜前頭側にかけての領域)
手で「さわる・つまむ・にぎる・動かす」といった感覚運動の経験を通じて、 子どもはものの形や大きさ、重さ、違いを脳の中で理解できるようになっていきます。 この「手で考える力」は、小脳と感覚運動野が中心となって働き、前頭前野とも太いネットワークを作ります。
研究では、幼児期の指先運動と後の学力(言語・数量・図形)のあいだに関連があることが示されています。 SheSTEMでは、ブロック操作や触覚ゲームなど、手指を使って考える活動を通じて、 図形・量・言葉の土台となるセンサリモーター知性を育てます。
ROOT 2|Spatial Cognition Foundation ― 空間根拠力
関連する脳の領域:頭頂連合野(図の上側に広がる領域)
空間根拠力とは、上下・左右・前後、距離や向き、回転など、 「どこに・どのようにあるか」を頭の中でイメージする力です。 この能力は、頭頂連合野と呼ばれる領域で主に処理されます。
空間認知は、後の図形・地図・理科実験・プログラミングなど、 STEM分野全体の土台になります。積み木を違う角度から見たり、 「回したらどう見える?」と想像したりする経験が、このRootsを大きく育てます。
ROOT 3|Visual-Structural Reasoning ― 構造視覚推論
関連する脳の領域:視覚野+頭頂葉(図の後頭部〜頭頂部)
構造視覚推論は、見えている形や図の中からパターン・規則性・部分と全体の関係を見抜く力です。 「この図形は三角形がいくつ集まっている?」「ここを切ると、どんな形に分かれる?」といった 構造を見る眼を育てます。
視覚野で捉えた情報を頭頂葉で再構成することで、 図形を「ただの形」ではなく意味のある構造として扱えるようになります。 これは、後の幾何・代数・物理などの抽象的な学びに直結します。
ROOT 4|Executive Logic Engine ― 実行ロジック機能
関連する脳の領域:前頭前野(図の前方に位置する領域)
実行ロジック機能は、情報を整理して「まず何をするか」「次にどうするか」と順番に考え、 仮説を立てて検証し、判断する力です。脳の中では前頭前野が中心となり、 頭頂連合野や側頭葉から送られてくる情報を編集しています。
このRootsが育つと、算数の文章題で「状況を整理する」「必要な情報だけを取り出す」ことができるようになり、 日常生活でも「計画する」「気持ちを切り替える」といった力につながります。 SheSTEMでは、if–thenカードや条件整理パズルなどを通じて、 子どもたちの“考える順番”を整えていきます。
ROOT 5|Quantitative Reasoning Core ― 数量・数理の中核
関連する脳の領域:頭頂連合野+前頭前野
数量・数理の中核は、数を「ただ数える」のではなく、 かたまりとしての量・数どうしの関係・ルールとして理解する力です。 数量感覚(ナンバーセンス)やサブタイジング(瞬間的量把握)は頭頂連合野で処理され、 それを前頭前野が論理的な推論につなげていきます。
「3と2で5」「2つずつ増える」「半分にすると…」といった感覚が身につくと、 計算だけでなく、分数・割合・関数といった学びにもスムーズに入っていけます。 SheSTEMの量感ワークやストーリー問題は、このRootsを育てるために設計されています。
ROOT 6|Semantic Expression Ability ― 意味表現力
関連する脳の領域:側頭葉+前頭前野
意味表現力は、「見たこと・考えたこと・感じたこと」を 自分の言葉で説明したり、人に伝えたりする力です。 語彙や意味の理解を担う側頭葉と、思考を編集する前頭前野が連携することで育ちます。
「なぜそう思ったの?」「どうしてそうなったの?」という問いかけに答えられる子は、 問題の状況を深く理解し、自分の考えを整理することができます。 SheSTEMでは、3コマ説明やストーリーづくり、図から言葉に変換する活動を通じて、 STEMに必要な“説明する力”を育てます。
6つのRootsが「思考の木」を育てる
ROOT1〜6は、それぞれ別々の能力ではなく、根っこのように互いにつながり合っています。 手で考える経験(ROOT1)が空間の感覚(ROOT2)や構造を見る力(ROOT3)を支え、 それらが実行ロジック(ROOT4)と数量感覚(ROOT5)に統合され、 最後に意味表現力(ROOT6)として外にあらわれます。
SheSTEMの教材とプログラムは、この6つのRootsをバランスよく育てることで、 子どもたちが「算数がわかる」「自分で考えるのが楽しい」と感じられる土台づくりを目指しています。
これらの6つの思考Rootsを土台にした算数教材シリーズ 「算数シンキングエンジン」 では、年長〜小学生向けのミッション形式の問題を通して、「つまずく前」の思考の根っこを楽しく育てていきます。
