子どもが“自分で問いを立てる力”は、家庭の会話で育つ

子どもが日常の中で問いを立てている様子を描いたイラスト。親子が会話しながら“どうして?なぜ?”を考えている場面

「問いを立てる力」は、日常の会話で育つ。まずは“なぜ?”を一緒に育てよう。

子どもが学びを深めるうえでいちばん大事なのは、
「自分のことばで“なぜ?”を立てられること」=問いを立てる力です。

問いを立てる力とは、
目の前の情報や出来事を、自分の言葉で“どうして?”と捉え直す力のこと。
これは学習のすべての基盤となるスキルで、記憶にも理解にも、そして探究にもつながります。

※割り算・分数を題材に「問いを立てる練習」をしてみたい方は、
こちらの「子どもと一緒に考える算数【ジュース3本を4人で分ける】」もあわせてご覧ください。


1|問いを立てる力は「学びの姿勢」をつくる

問いが立てられる子どもは、

  • 情報を“受け取るだけ”から“自分で整理する”に変わる
  • 理解が深まり、忘れにくくなる
  • 「どう考えたか」を言葉にできる
  • 探究・研究に必要な「入口」が作れる
  • 自分の疑問を大人が受け止めてくれることで主体性と自信が育つ

つまり「問い」は、 知識を増やすための“道具”であり、学ぶ姿勢をつくる“土台”なのです。


2|問いを立てる力は「才能」ではなく“日常の積み重ね”で育つ

問いを立てる力は、特別な教材がなくても育ちます。
むしろ、学校よりも家庭のほうが育つ場面が多い力です。

育つ流れはとてもシンプルです。

  1. 大人が「問い」を見せる(考えの実況中継)
  2. 子どもの“モヤモヤ”を問いの形に翻訳する
  3. 子どもが大人の問いをマネして言えるようになる
  4. すこしずつ主導権を子どもに渡していく

つまり、大人が使う言葉が変われば、 子どもの「問い」は自然と育つということです。


3|今日から家庭で使える「問いの型」3つ

子どもに「質問してみて」と言っても難しいので、まずは“型”を渡します。

◆型①「もし自分が〜だったら?」問い

  • 「もし自分がこの4人の1人だったら、どれくらいもらえる?」
  • 「もし自分がこのキャラクターならどう感じる?」
  • 「もし自分が風なら、どこに吹きたい?」

◆型②「何と何の関係?」問い

  • 「この式って何と何の関係?」
  • 「この2つの値段はどんな関係?」

◆型③「どこが同じで、どこが違う?」問い

  • 「8÷4と3÷4、どこが同じでどこが違う?」
  • 「今日と昨日、どこが違う?」

この3つの型を回すだけで、
子どもの思考は驚くほど深くなります。


4|子どもの「なんか変」「よくわからない」を問いに翻訳する

子どもは最初、問いにならない「モヤモヤ」を口にします。

  • 「なんか変」
  • 「意味わかんない」
  • 「気持ち悪い」

ここを親が“通訳”すると、問いに変わります。

例:

子「このジュース、なんか変」
親「そっか。“なんで変なんだろう?”って思ったんだね。」
親「質問にすると『なんで他のと形が違うんだろう?』になるかな?」

この “モヤモヤ → 問い” の翻訳を繰り返すと、
子どもは自然と「問いの形」に慣れていきます。


5|“生活のあちこち”が問いの練習場。今日からできる実践アイデア

どんな日常の場面でも、問いを育てることができます。

◆食卓で

  • 「今日の味噌汁、昨日とどこが違う?」
  • 「なんでこのお皿は丸いんだろう?」

◆お風呂で

  • 「泡がここだけ大きいの、なんでだろう?」
  • 「水ってなんで高いところから流れるの?」

◆買い物中

  • 「この2つのジュース、どこが同じでどこが違う?」
  • 「なんで牛乳は紙パックとビンがあるの?」

◆テレビを見ているとき

  • 「なんでこの人はこの順番で説明してる?」
  • 「この2人、どこが似ている?」

◆寝る前

  • 「今日いちばん“なんで?”と思ったことは?」
  • 「それ、どうして気になった?」

寝る前の会話は、子どもが一日を振り返る時間なので、 いちばん深い問いが生まれやすい時間帯です。


6|問いをほめるときは「ラベリング」すると力が伸びる

問いを立てられたら、「いい質問!」で終わらせず、 どんなタイプの問いか“名前をつけて”ほめると育ち方が変わります。

  • 「いまのは“違いに気づく問い”だね!」
  • 「それは“関係を見る問い”だね。」
  • 「いまのは“立場を変える問い”だね。」

子どもは、自分が“どんな考え方をしたか”を理解でき、 次の問いが自然と生まれやすくなります。


7|まとめ:問いを立てる力は、家庭の会話でゆっくり育つ

  • 問いは「学びの入口」になる力
  • 才能ではなく、日常の会話で育つ
  • 問いの“型”を渡すと子どもは一気に伸びる
  • モヤモヤを問いに翻訳してあげることが大事
  • 毎日の小さな会話が、大きな学びにつながる

特別な準備はいりません。 今日の生活のひとコマから、親子で「問い」を育てていきましょう。

▼算数の具体例で「問い」の練習をしたい方は 子どもといっしょに考える算数【3本のジュースを4人で分ける】 を参考にしてください。

▶ SheSTEM 公式YouTubeチャンネル

子どもと一緒に考える算数|動画はこちら
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academic_editor
教育経済学を専門とし、「どのような学びへの投資が子どもの将来の選択肢を広げるのか」を研究してきた教育デザイナー。 学生時代は、国内外の教育制度・STEM教育・探究学習モデルを比較しながら、非認知能力やメタ認知が長期的な学びにどのような効果をもたらすかをデータと実証研究の視点から分析研究をしました。 SheSTEM では、 子どもが“問いを立てる力”を育てる家庭での工夫や、 「選ばなくなる未来」を防ぐための学びの環境づくりなど、 日常に落とし込めるヒントを発信していきます。 教育経済学の “長期的視点” × “学習デザイン” をテーマに、 お子様の興味と未来を広げるための視点を届けていきたいと思います。

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