数は「数えない」ほうが、子どもの思考は立ち上がる

― ボール5個を「3と2」に見られる力は、算数の土台 ―
子どもといっしょに算数を考えていると、どうしても 「1、2、3…」と数える場面 が多くなります。
もちろん、数えることは大事です。でも実は、算数が得意になる子は、いつまでも数えていません。
たとえば机の上にボールが5個あったとして――。
大人は「1、2、3…」と数えてから「3と2に分けよう」とはしないはずです。
“見ただけで” 3個と2個のまとまりに見えている。
ここに、算数の大きな秘密があります。
1|算数が得意な子は、「量をひとかたまり」で見ている
算数の世界では、量を一瞬でとらえる力 がとても重要だとされています。
専門用語では サブタイジング(subitizing) と呼ばれる力で、
「3つくらいのまとまり」「2つくらいのまとまり」を、いちいち数えずに“パッ”と把握する能力です。
大人は自然にできていますが、子どもには練習が必要な算数の土台です。
2|「5個を3と2に分ける」は、数えているわけではない
ボール5個を3個と2個に分けるとき、大人の頭の中では――
- ここが“3個っぽいまとまり”
- ここが“2個っぽいまとまり”
- まとまりどうしをパッと分けている
これは「計算」ではなく、“見てわかる”感覚です。
この“かたまりで見る”感覚があると、分数・文章題・図形など後の単元が驚くほどスムーズになります。
3|いつまでも数えている子は、どこで困るのか?
量をかたまりで見る習慣が育っていないと、子どもはどんな場面でも
- 「1、2、3…」と一個ずつ数える
- 図や式を“バラバラの点”として捉えてしまう
- “まとまり”という概念が育たない
その結果、分数・割合・図形の“構造”が見えにくくなり、算数の理解がだんだん難しくなっていきます。
4|家庭で育てられる「量感」の育て方(今日からできる3つ)
難しいことをしなくても大丈夫です。今日からできるのは、この3つだけ。
- 見た目のまとまりで声をかける。 「どんなまとまりに見える?」
- 分け方のバリエーションを言葉にする。 「5って、3と2にも、4と1にも見えるね」
- 数える前に、視覚で考える時間をつくる。
「数える前に、まとまりで見てみようか」
💡今回は“ダイジェスト版”。続きは連載で少しずつ解説します
今回の内容は、数学教育の世界では サブタイジング(量を一瞬でとらえる力)、 部分‐部分‐全体(3と2で5ができる関係)、 数感(number sense) と呼ばれる大切な分野に関わっています。
参考文献:
- Clements(Subitizing) — D. H. Clements, “Subitizing: What Is It? Why Teach It?” (1999)
- Wästerlid(Part–Part–Whole) — Catarina Anna Wästerlid, “Conceptual Subitizing and Preschool Class Children’s Learning of the Part–Part–Whole Relations of Number” (2020)
- Bisaillon(Number Sense Continuum) — Nathalie Bisaillon, “Development of Number Sense and Numeration: A Continuum Hypothesis” (2023)
今回は、このテーマの“ダイジェスト版”としてまとめました。
このテーマについては、今後も、かみ砕いて少しずつ紹介していきます。
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