調査レポート

SheSTEM Japanでは、女子がSTEM・理系・技術系・ものづくり分野から、いつ、なぜ距離を取り始めるのかについて、国内外の調査・研究知見をもとに整理した統合調査レポートを公開しました。

本レポートでは、幼児期〜低学年の学習基盤、小4〜小5で起きる算数の質的転換、男女共通の理数系への苦手意識・理系回避、そして女子により強く作用するジェンダーバイアスを統合し、女子STEM離れの構造を整理しています。

女子が理系を選ばないという結果には、選択肢が形づくられるまでの長い過程があります。

幼児期からの経験、算数・数学への得意意識や不安、周囲から受け取るジェンダーバイアス、将来の職業イメージが重なることで、理系・技術系・ものづくりが、進路を選ぶ前に「自分には関係ない」「自分の将来像とは違う」と捉えられやすくなります。本レポートでは、その背景にある学習構造と社会的要因を整理しています。

本レポートで整理していること

  • 女子STEM離れは、進路選択直前に突然起きるものではないこと
  • 幼児期〜低学年の数量経験・空間経験・言語化経験が、後の算数理解の土台になること
  • 小4〜小5で、算数が「計算」から「数量関係・意味・構造」を扱う学びへ変わること
  • 算数・数学への苦手意識や数学不安は、男女共通に起こりうること
  • その上に、「数学・理系・技術職は男子向き」というジェンダーバイアスが重なること
  • 女子が理系・技術系・ものづくりを、早い段階で選択肢から外しやすくなる構造
  • 幼児期の経験、学習上のつまずきへの支援、数学不安への対応、ジェンダーバイアスの見直し、探究学習、進路や仕事との接点を、子どもの成長に沿ってつなぐ必要性

女子STEM離れを5段階で捉える

女子STEM離れが、幼児期から進路選択までの5段階で進む構造を示した図
  1. 幼児期〜低学年の学習基盤
    数感覚、空間認識、ワーキングメモリ、言語化、試行錯誤などの土台が形成される
  2. 小4〜小5の算数の質的転換
    計算中心から、分数・割合・単位量・比例・式表現など、数量関係や意味理解を扱う学びへ変わる
  3. 男女共通の苦手意識・理系回避
    算数・数学の点数低下や失敗経験が、数学不安や苦手意識につながりやすくなる
  4. 女子に強く作用するジェンダーバイアス
    「数学・理系・技術職は男子向き」という社会的イメージが重なる
  5. STEM・技術系・ものづくりを選択肢から外す
    理系・工学・ICT・ものづくりを、自分の将来の選択肢として想像しにくくなる

選択肢を狭めないために必要なこと

女子STEM離れを変えるためには、進路選択の直前に理系の大学や仕事の情報を届けるだけでは十分ではありません。

幼児期から、数・形・空間・ものづくりに触れる経験を広げること。小4〜小5で起きる算数の学びの変化を支え、つまずきを「自分は向いていない」という判断に変えないこと。算数・数学への苦手意識や不安が固定する前に支えることが必要です。

同時に、「数学や理系は男子向き」「工学やICTは男性の仕事」といったジェンダーバイアスを見直し、女子も実験、設計、データ分析、ICT、ものづくりなど、幅広い経験や役割を持てるようにする必要があります。

さらに、数学や理科で学んだ知識や技能を、実生活や社会の問いに使う経験を増やすことも重要です。問いを見つけ、情報やデータを集め、比較・分析し、試した結果をもとに考え直す探究学習は、その方法の一つです。

文部科学省は、探究的な学習を「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の過程として整理しています。また、STEAM教育を、各教科の学びを実社会の問題発見・解決に生かす教科横断的な学習として位置づけています。

必要なのは、幼児期の経験、算数のつまずきへの支援、数学不安への対応、ジェンダーバイアスの見直し、探究学習、進路や仕事との接点を、別々の取組として終わらせず、子どもの成長に沿ってつなぐことです。

レポートの概要

タイトル 女子STEM離れは、いつ、なぜ起きるのか
副題 幼児期〜低学年の学習基盤、小4〜小5の算数の質的転換、教育構造、ジェンダーバイアスを統合した調査レポート
作成 SheSTEM Japan
形式 PDF

このような方におすすめです

  • 女子の理系離れ・STEM離れの背景を知りたい方
  • 子どもの算数・数学への苦手意識がどこから生まれるのかを考えたい方
  • 小中学生段階からの理系・ものづくり人材育成に関心のある方
  • 探究学習やSTEAM教育と、女子STEM支援との関係を考えたい方
  • 教育、企業、自治体でDEIや次世代人材育成に関わる方

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調査レポートをテーマ別に読む|全7回コラム

本調査レポートで整理した女子STEM離れの構造を、幼児期の経験、小4の壁、数学不安、ジェンダーバイアス、探究学習、必要な支援というテーマごとに詳しく解説しています。

第1回|全体像 女子STEM離れは、進路選択の直前に始まるわけではない 女子STEM離れが、進路選択より前からどのように進むのかを5段階で整理します。 第2回|小4の壁 計算はできるのに、説明で止まる理由 算数が計算中心から、数量の関係や理由を説明する学びへ変わる時期を考えます。 第3回|幼児期〜低学年の経験差 理系の入り口は、幼児期の遊びと経験の中にある 数・形・空間・試行錯誤に触れる経験が、後の算数理解にどうつながるかを解説します。 第4回|数学不安 「できない」子だけの問題ではない 学力だけでは説明できない数学への不安と、苦手意識が固定していく仕組みを考えます。 第5回|ジェンダーバイアス 女子が理系を選ばない背景とは 「数学や理系は男子向き」という社会的イメージが、女子の自己認識に与える影響を見ます。 第6回|教育構造と探究学習 正解を出す学びだけでは、STEMの力は見えない 正答や点数だけでは見えない力と、数学や科学を社会の中で使う探究学習を考えます。 最終回|必要な支援 進路選択を支えるには、その前の「選択肢が残る学び」が必要 進路選択支援と、苦手意識が固定する前の学びを、幼児期から切れ目なくつなぐ視点を示します。

SheSTEM Japanの視点

SheSTEM Japanは、女子に理系を勧めることだけを目的とするのではなく、理系・技術系・ものづくりが、子どもたちにとって「自分にも関係のある選択肢」として残るための学びの設計を重視しています。

そのためには、進路選択直前の情報提供だけではなく、幼児期〜小中学生段階から、数・形・空間・試行錯誤に触れ、学習上のつまずきを適性の判断に変えず、ジェンダーバイアスによって経験や役割を狭めないことが必要です。さらに、数学や理科で学んだことを実生活や社会の問いに使い、大学や企業、仕事との接点へつなぐことも重要です。本レポートは、その考え方の背景となる調査・研究知見を整理したものです。