娘と息子で、同じように返せていますか?

「これ、やってみたい!」
子どもがそう言ったとき、あなたはどう返していますか。危ないからやめよう。それとも、いっしょにやってみようか。
そして、もうひとつ。その返し、娘でも、息子でも、同じようにできていますか。
無意識の差は、ここで生まれる
多くの場合、意図して差をつけているわけではありません。
それでも、女の子には「危ないからやめよう」、男の子には「やってみよう」 そんな反応の違いが、自然と生まれやすい。
これは個人の問題ではなく、長い時間をかけてつくられてきた“当たり前”の影響が大きいのだと思います。
こうした無意識の偏りが、家庭の声かけにどう混ざるのかは、 こちら でも詳しく整理しています。
「向き・不向き」の前にあるもの
「うちの子は、理系に向いていないみたいで…」
そう感じる前に、一度考えたいことがあります。そもそも、触れている量は同じでしょうか。
ユニセフも、女の子はSTEMに触れる機会が少なくなりやすいことを指摘しています。 関連資料はこちら
向き・不向きの前に、経験の差が生まれている可能性がある、ということです。
学力があっても、その先が選ばれないことがある
実際、日本の女子の数学・科学の力は世界トップ水準です。 OECD・PISA2022
それでも、理系進学率は7%程度と、OECDの中でも低い水準にとどまっています。 OECDデータ
つまり、学力だけでは、この差は説明しきれません。
進路の前に、「できそう」がつくられている
進路は、学校の成績や教科の得意・不得意、そして自分が好きなこと、やってみたいことが重なり合う中で形づくられていきます。
その前提になる得意・不得意や、好き・嫌いも、ある日突然決まるわけではありません。
何に触れてきたか。やってみたいと思ったときに、やらせてもらえたか。うまくいかなくても、もう一度試せたか。
そうした積み重ねの中で、子どもは少しずつ「自分にもできるかもしれない」という感覚を育てていきます。
その感覚が、教科への手応えになり、その先の進路の選択にもつながっていきます。
大切なのは、「入口を閉じないこと」
ここで一番大事なのは、最初から上手にできることではありません。
やってみたいと思ったときに、その入口を大人が先に閉じてしまわないことです。
やってみることも、うまくいかないことも、もう一度試すことも、子どもにとっては全部、経験になります。
その積み重ねが、「できるかもしれない」という感覚につながっていきます。
未来の人材不足は、採用だけでは解決しない
2040年、日本では理系人材が120万人不足すると言われています。
いま企業は、理系人材を確保するために、採用広報やインターン、接点づくりを強めています。
もちろん、そうした取り組みは必要です。ただ、採用競争を強めるだけでは、社会全体として理系人材は増えません。
なぜなら、そもそも理系に進む人の母数そのものが細いからです。
つまり、この問題は採用の段階だけで起きているのではなく、もっと手前から始まっているということです。
進路の前に、選択肢を増やす
理系人材不足を本当に解決したいなら、進路を選ぶ場面だけではなく、その前の段階から、理系につながる人を増やしていく必要があります。
子どもの将来の選択肢は、進路を選ぶ場面で突然決まるものではありません。何に触れてきたか、どんな言葉をかけられてきたかの積み重ねの中で、少しずつ形づくられていきます。
そして、その積み重ねには、社会の中でつくられてきた「無意識の当たり前」が混ざります。
「危ないからやめておこう」
「これはこの子にはあまり合わないかも」
そうした判断が、触れるものや続ける経験の差になり、後から「好き」「得意」「向いている」の差として現れていきます。
だからこそ大切なのは、早い段階で向き・不向きを決めることではなく、子どもが「やってみたい」と思ったときに、その機会を減らさないことです。
その小さな積み重ねが、後の「得意・不得意」をつくり、未来の選択肢を変えていきます。
関連解説
アンコンシャス・バイアスそのものの仕組みを整理したい方は、 解説ページ もご覧ください。


